ゴールデンクロスで買い、は本当なのか?

杉原杏璃さんの株は夢をかなえるための道具を読んでいて、ゴールデンクロスはあまり見かけることはないが、出会ったら絶対買い、というようなことが書いてあり、実際にデータで調べてみたらどういう結果になるんだろうと疑問を持ちました。

この本に限らず、ゴールデンクロスは様々な場所で買いシグナルとして語られていますが、本当にそうなのでしょうか。今回は日経平均に組み込まれている銘柄を対象に、2018年以降のゴールデンクロスをすべて探し出し、その後株価が本当に値上がりしているのか(=買いなのか)を調べてみたいと思います。

ゴールデンクロスとは

大和証券さんのウェブサイトによると、ゴールデンクロスは次のように定義されています。

短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から上に交差して抜けること。

https://www.daiwa.jp/glossary/YST0548.html

上記の引用元ページにはゴールデンクロスが図入りで解説されていてわかりやすいので、なじみのない方はぜひ元ページの画像をご覧になってください。

また、野村證券さんのサイトには次のようなことも書いてあります。なんというか、調べようと思っていたことの答えがズバリ書かれている気がします。

ゴールデンクロスは、買い場といわれているが絶対的なものではない。基本的なチャートの見方としての参考となる。

https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ko/golden.html

対象のデータ

2019年8月時点で日経平均に組み込まれている225銘柄を対象として集計します。使用するデータは2018/01/04~2019/08/27 (記事執筆時点) の1年8か月分とし、株価データは株式投資メモさんからダウンロードさせていただきました。

データの期間が短めなので、日足のチャートを使うこととし、調整後終値の移動平均を使用します。短期の移動平均線をM日、長期の移動平均線をN日としてMとNの値を変化させて調査します。

また、コードは省略しますが、データを分析するためのコードはPythonで記述しました。

分析

事前分析

まず最初に、ゴールデンクロス関係なく、この期間の株価がどのような動きをしていたか見てみましょう。ある日とK日後の終値を比較し、株価が上昇しているか、下落しているか(変化しなかったものも含む)を集計してみました。同時に、その変化率(損益率)の平均も出してみました。

例えば、特定の銘柄が8/1の終値1000円、8/2の終値1050円だった場合、K=1の部分の上昇回数に1がカウントされ、この銘柄の損益率は 1050/1000=5%と計算する、といった感じです。平均損益率はこの5 %という値の全期間・全銘柄での平均です。

集計結果がこちらです。

K上昇回数下落回数平均損益率
14342546799-0.06388%
24295147048-0.13195%
34304646728-0.19746%
44277646773-0.26356%
54223947085-0.32900%
64205947040-0.39184%
74154747327-0.45801%
84125647393-0.52770%
94069247732-0.59799%
104020247997-0.66375%
113980548169-0.73371%
123959748152-0.79988%
133916548359-0.86991%
143881948480-0.93814%
153848548589-1.00342%
163829748552-1.06778%
173807348551-1.12647%
183794748452-1.17489%
193781748357-1.22129%
203762048329-1.27054%
213729748427-1.31990%
223710648393-1.36312%
233689148383-1.39413%
243665648393-1.42639%
253648148343-1.46225%

今回対象とした期間では、株価はK日後には下落することが多い様子が見て取れます。

M=5, N=25の場合

比較的よくつかわれていそうだった、短期が5日移動平均線、長期が25日移動平均線というパターンで調べてみます。

例えば 1332 日本水産の場合、調整後終値、5日移動平均線、25日移動平均線をグラフにプロットすると次のようになります。赤い丸で囲んである箇所がゴールデンクロスになります。

日本水産のゴールデンクロスの例

ゴールデンクロスの出現回数

全銘柄でのゴールデンクロスの出現回数は2309回でした。ました。結果を全て載せるとかなり長くなるので省略しますが(希望があれば別記事で掲載します)、ここでは簡単な統計値のみ紹介します。

最大値18
最小値6
中央値10
平均値10.26
標準偏差2.03

また、ゴールデンクロスの出現回数の分布は下図のヒストグラムのようになります。横軸がゴールデンクロスの出現回数、縦軸が銘柄数です。だいたい正規分布のような形をしているのが見て取れます。

ゴールデンクロスは20か月のうちに1銘柄当たり10回程度しか巡り合えない、珍しいシグナルだということがわかりました。それでは、ゴールデンクロスを見て株を買ったら儲かるのでしょうか?

ゴールデンクロスのK日後の終値

データ処理を簡単にするため、「ゴールデンクロスを観測した日の終値で購入し、K日後の終値で売却」すると想定し損益を計算してみます。K日後に終値が上昇していた回数(上昇回数)、下落または変わらなかった回数(下落回数)、全ゴールデンクロスの損益率の平均値の3項目を集計しました。

Kの値は翌日(K=1)から25営業日後(K=25)まですべて計算してみます。その結果がこちら。(Kの値が大きくなるとゴールデンクロスの回数が減っているのは、K日後のデータがまだとれておらず検証できないからです

K上昇回数下落回数平均損益率
111021205-0.00026%
2109512120.00010%
3114311630.00024%
411561142-0.00007%
511481148-0.00113%
611911101-0.00090%
711781111-0.00098%
811511132-0.00105%
911541125-0.00177%
1011571117-0.00154%
1111201148-0.00221%
1211151147-0.00231%
1311091153-0.00231%
1411141147-0.00263%
1511031156-0.00332%
1610851172-0.00414%
1710621195-0.00563%
1810461206-0.00730%
1910161233-0.00810%
2010371208-0.00854%
219971246-0.01006%
229831256-0.01074%
239661250-0.01134%
249851226-0.01244%
259661240-0.01355%

Kが4~10だと株価が上昇していることが多かったものの、あまり有意な差とは言えなさそうな僅かな差となりました。また平均損益率で言うと、4~10ではすべてマイナスですし、このシグナルだけを頼りに売買しても利益は得られないかもしれません。

最初に確認した全体の傾向と比較すると、平均損益率がプラス側にずれているので、多少なりとも値上がりの傾向をとらえているけれども、利益を確実に出せるほどの強いシグナルではないといった感じでしょうか。

M=25, N=75の場合

同様の分析を、短期移動平均を25日、長期移動平均を75日にした場合も見てみましょう。

ゴールデンクロスの出現回数

全銘柄でのゴールデンクロスは658回で、分布は下記のようになりました。3回をピークとした分布で、一つの銘柄に絞ると1年でも数えるほどしか出会えない珍しい現象だということがわかります。

ゴールデンクロスのK日後の終値

続いてK日後の終値を見てみます。

K上昇回数下落回数平均損益率
1307350-0.08680%
2282375-0.35166%
3278379-0.52634%
4274381-0.75673%
5270385-0.96284%
6254399-1.16295%
7261392-1.33298%
8249400-1.42190%
9249399-1.58565%
10248399-1.73319%
11253394-1.82255%
12248398-1.94579%
13249397-2.00590%
14236410-2.13405%
15237408-2.19404%
16231414-2.41364%
17235410-2.47979%
18236402-2.57185%
19231402-2.63106%
20242385-2.65246%
21241381-2.62447%
22241378-2.58858%
23245368-2.45422%
24246364-2.36611%
25239366-2.24291%

全体的に下落の回数のほうが多いのは同じですが、平均損益率は全期間・全銘柄を対象とした場合よりもマイナス側にずれてしまっています。

当然、この結果だとゴールデンクロスで買っても利益は出なさそうですし、なんならこの期間だけの話をすればゴールデンクロスで売った方が利益が出そうな数字にさえ見えます。

結論

使う移動平均線の長さ(M, N)や、値上がりを何日間待つか(K)によって細かい数字は異なるものの、今回調べた条件においては、ゴールデンクロスだけでは絶対買いとは言えないのかなと思います。

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